構想の内容 ABOUT
本学の目指す姿と構想の概要
新型コロナウィルス感染症のパンデミックにより、全世界の社会・経済が大きな影響を受け、今、社会・経済システムの変革と再構築が強く求められています。多様な「知」と「人材」が集まり、新たな価値創造の基盤となる研究とイノベーションの創出を牽引できる大学が果たす役割は大きくなっています。
九州大学は、指定国立大学法人として、自然科学系と人文社会科学系の知の融合による「総合知」によって、社会的課題の解決とそれによる社会・経済システムの変革に貢献する「総合知で社会変革を牽引する大学」となることを目指して、最高水準の研究教育を展開し、福岡・九州から、日本、アジアそして世界へと緊密につながりながら、総合知によって直面する社会的課題を解決して持続可能な社会の発展と人々の多様な幸せ(=Well-being)を実現できる社会を作り出すことに貢献します。
目指す姿を実現するための取組
世界最高水準の研究教育拠点の形成
本学の研究教育機能を強化・活性化させ、新たな世界トップクラスの研究領域を発掘・育成し、社会・経済システムの変革を促す総合知を創出・活用する世界最高水準の研究教育拠点を実現します。
多分野の知を融合し、新たな社会をデザインする力や、総合知により新しい価値を創造できる力を備えた、Society5.0社会の実現に求められる価値創造人材を育成します。教育と研究を一体不可分のものとして展開し、特に博士課程では、先端研究者に加え、高度専門職業人としての活躍を見据えた幅広いキャリアパス形成を意識した教育を展開します。
総合知を創出する教育
- 課題解決の素養を醸成させるPBL/TBL
- STEMにデザイン思考を取り入れる
- アントレプレナーシップで起業家精神を涵養する
DXを推進する教育
- 文理を問わずデータリテラシーを向上させる
- 数理・データサイエンスの素養を醸成する
グローバルな視点・ 思考の獲得
- 国際コース・プログラムの充実
- COIL(Collaborative Online International Learning)型教育の拡充
- ダブル・ディグリー、ジョイント・ディグリーの充実と拡大
博士課程の教育・支援の充実
- 分野融合型学位プログラムの実施
- 経済支援・キャリアパス支援
学内資源(ヒト・モノ・カネ・スペース・トキ)の戦略的な配分により、学術基礎研究から社会展開研究までを支援し、各研究者の自由闊達な研究、研究者の共同・協働による研究、戦略的な集中投資を受けた本学の強みとなる分野や特徴的な研究分野の伸長と、イノベーションの源泉となる秀逸な研究者の獲得・育成を図ります。
総合知創出・最先端研究強化・新領域発掘
- 大学の組織的研究戦略策定
- 戦略の進捗を管理するなど統括機能の強化
- 総合知から生まれる最先端新学術領域や学理の発掘
秀逸な研究者の獲得と育成
- 独創的な研究を行う若手研究者に、研究に集中できるスペース・環境・経費を提供(稲盛フロンティアプログラム)
- 女性・若手教員に世界トップレベルの研究及び教育に挑戦する機会を提供(SENTAN-Q)
- 出産・育児等、ライフイベントに応じた細やかな支援
研究環境整備
- 毎年3か月程度の研究時間の確保(FQR:Free Quarter for Research)
- 研究・教育に定年退職教員等を活用
- 研究機器整備と共用化
「国際頭脳循環」のハブとして機能する「生み出された研究教育の実績が世界中から高く評価され、そのことにより世界中から優れた学生・研究者を集めることができる大学」を目指し、戦略的パートナーシップ大学等との連携強化や、国際協働を加速させる環境を構築し、この機能を強化します。
グローバル教育の拡充
- 国際コース・プログラムの充実
- COIL(Collaborative Online International Learning)型教育の拡充
- ダブルディグリープログラム、ジョイントディグリープログラムの充実と拡大
- DXを取り入れた学修者本位の日本語学習
研究とリーダーシップ
- 国際協働のためのマッチングファンド
- グローバルリーダー育成(Global Young Academyと協働)
- クロスアポイントメント等による国際共同研究の活性化
グローバル環境構築
- 二言語化体制確立
- 海外同窓会・ネットワークの拡充
国際連携の強化
- 戦略的な重点協定校の拡充
- 世界トップクラス大学群コンソーシアムの積極的活用
- グローバルアドバイザリーボードの設置・活用
産学官連携活動のインターフェースとなる「オープンイノベーションプラットフォーム」を創設します。産学官民が集まり、組織や制度に捉われない自由な議論の場を形成し、バックキャストによる中長期的ビジョンメイキングやプロジェクトの実施、研究成果の技術移転やスタートアップの支援など、社会的課題解決と研究成果の事業化による社会実装を促進します。また、獲得した収入も活用して、研究成果創出と社会実装の好循環を生み出し、さらに研究教育成果を様々な形で社会展開する取組を行います。
オープンイノベーション機能の強化
- オープンイノベーションプラットフォーム創設
- 社会的課題解決に向けた地域の各コンソーシアムとの協働(九大版地域連携プラットフォーム)
- 産学官連携機能の外部法人化
社会実装化の促進
- 組織対応型連携の促進
- 大学発ベンチャーの創出(ギャップファンド/ステップファンド、GAPファンドNEXTプログラムの活用)
シチズンサイエンスの展開
- 科学コミュニケーション活動の拡充
- 社会実験的な研究教育活動の展開
- リカレント教育拠点の形成
本学が目指す姿の実現のため、ガバナンス機能を強化し、社会的課題の解決やDX推進による社会・経済システムを変革する取組や、教育、研究、国際協働等の取組を強力に展開します。
運営から経営重視のマネジメントへの変革
- 多様性が生む大胆な経営改革
- 総長のリーダーシップによる改革実行
- エビデンスに基づく合理的な施策の立案
- 組織目標の評価に基づく資源配分
- 課題の共有によるstakeholder engagementの強化
本構想の実現と、各取組に対する戦略的な資源配分が可能となるよう、財務基盤の強化に取り組みます。
研究力強化による外部資金獲得や総長トップセールスによる新たな資金源の探索
- 戦略に基づく競争的資金の獲得
- 大型組織対応連携の促進(共同研究・受託研究)
- 産学官民連携機能強化による知財収入の拡大
- 九州大学同窓会、九州大学CEOクラブの活用
- 大学発ベンチャー創出を支援する民間ファンドの活用
総合知による社会変革の取組
複雑な社会的課題を解決するため、本学の強み・特色を生かし、社会的課題の中で先導して3つのエントリポイントを設定し、課題解決に取り組みます。 また、Society5.0で謳われている新たな未来社会像の実現に向けた「今までにない新たな価値を次々に生み出す」データ駆動型の教育・研究・医療を展開します。
本学の強み・特色と幅広い分野の自由闊達な研究群を生かし、社会的課題の中で先導して取り組むべきエントリポイントとして以下の3つを設定しました。この3つの課題解決の取組を福岡・九州を舞台に始め、同様の課題を有する日本、アジア、そして世界の地域へと展開していきます。
本学が取り組む3つのエントリポイント
脱炭素
2050年までの社会の脱炭素化実現に向け、要素研究群を束ね、脱炭素化の社会実装を見据えた取組を実施するとともに、福岡・九州地域と連携したグリーンイノベーションハブとなり、革新技術の創出、脱炭素社会モデル構築などの政策提言、高度人材育成に貢献
政府が掲げた2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルの達成には、従来の研究や技術の単なる延長や最適化だけでなく、社会全体の脱炭素化を可能にする革新技術の創出と、あるべき未来社会の姿や社会デザインの提示が必要です。 本学では、世界トップクラスのグリーンエネルギー関連の研究実績を活かし、2030年を目標に脱炭素化に向けた非連続のイノベーションを実現する革新技術と社会像を提案します。
医療・健康
DX戦略の下で、「疾患予測・早期発見」、「身体機能維持・遠隔医療」、「精密医療・革新的治療」の3分野を中心に、医療研究シーズの発掘・移転や質の高い臨床研究・治験の実施など、事業化・社会実装を見据えた取組を実施
少子化対策、健康寿命延伸、労働生産性の向上、未来の感染症への対応など健康安心社会の実現には、個々の医療・健康関連の研究成果の社会実装のみならず、DXで将来にわたりどのような社会変革を導くか、までを視野に入れた戦略が必要です。本学では、2030年を目標に、未来医療の社会的・倫理的問題解決、経済合理性と持続性に関する社会への提言や社会実装を加速します。
環境・食料
気候変動や大気・海洋汚染などの環境問題や、安心・安全な食料の持続的供給システムなどへの対応のため、海洋力学や大気科学を基盤とした大気・海洋研究や、養殖、育種技術、非可食資源のリソース化などにより国内外の多層的地域での社会還元、社会実装を見据えた取組を実施
気候変動や海洋汚染などの環境問題と、これに密接に関係する食料問題については、両者の関係性を踏まえた一体的な取組が必要です。我々は気候変動や大気・海洋汚染など、広範な地域に影響を及ぼす環境問題や、地球環境の保全を優先した安心・安全な食料の持続的供給システムなどの課題に取り組んでいかねばなりません。 本学では、2030年を目標に大気・海洋環境の未来予測モデルによる環境政策決定支援、ゲノム育種による新品種開発や持続的な食と農のエコシステム確立などにより、環境問題や食料問題などを抱える多層的な地域の社会的課題の解決に貢献します。
デジタル社会の発展を支える専門的・創造的な人材育成を担う大学として、国が掲げるデジタル社会の形成に向け、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」の基本原則を踏まえた取組を展開するとともに、Society5.0で謳われている人々に真の豊かさをもたらす新たな未来社会像を総合知によって描き、その実現に向けた「今までにない新たな価値を次々に生み出す」データ駆動型の教育・研究・医療を展開し、その成果を地域と共有・活用して社会変革に取り組みます。
Society5.0の実現に向けた基盤強化
DXによるサイバー空間とフィジカル空間の融合による新たな価値創造を基に「あるべき社会」を研究し、人文社会科学系と情報系の研究者が協働し、新たな社会モデルや、その実現のための戦略・取組を社会に発信・共有します。
データマネジメントとデータガバナンスの整備
データ駆動型の教育・研究・医療を推進するため、データの登録・更新・活用や、データ蓄積の構築・維持、データ構造の可視化などのデータマネジメントと、その実行を統制・サポートするデータガバナンスを構築します。
データ駆動型の教育・研究・医療の展開
データ駆動型の教育・研究・医療の展開
教育
「九州大学DX推進事業」の推進とその成果の全学展開や、全学部学生の必修科目として「情報科学」を加えるとともに、高年次・大学院生向けに「データサイエンス実践特別講座」等を体系的に展開し、文理を問わずデータリテラシーを理解した人材を養成
研究
計測科学・データ科学・計算科学・数理科学を統合した新たな科学的アプローチを展開できる若手研究者を育成し、データ駆動型研究環境を整えるとともに、学術情報リポジトリによるグリーンオープンアクセス等により、学術データを保存・公開し、その利活用を促進
医療
DXにより今後健康・医療システムが大きく変わることを見据え、日々の生活で個人が計測するデータや、診療データの活用等によるリスクの早期発見・予防、医療・健康サービスの高度化の推進